思考再開

自分さえ良ければ社会から、助け合い・共存共栄社会へ

「介護離職ゼロ」という発想自体への違和感

「介護離職ゼロ」とは?

「介護離職」という社会問題があります。身内の介護を理由に、仕事を辞める人たちが出てくることが、問題となっているのです。

身内の介護をするために、仕事を辞めたとします。2年間ほど、ひたすら介護に専念しました。身内を入居させる介護施設が見つかったので、介護をする必要はなくなりました。あるいは、身内が他界してしまったので、介護から解放されました。そこで再就職をしよう、と思うのですが、いくら探しても再就職先は見つかりません。場合によっては、生活保護を受けることになるかもしれませんし、あるいは、一家無理心中をすることになるかもしれません。年収1000万円あった人でさえも、このような事態になりかねない、という話もあります。

仕事の引き継ぎの問題もあります。介護離職をしたいと申し出た従業員は、「その人にしかできない仕事」に携わっているかもしれません。会社側からすれば、その人に辞められてしまっては困ります。そうすると、会社側がその人のことを、何としてでも辞めさせない、といった問題が出てきます。あるいは、離職の申し出をこころよく受け入れたために、業務が回らなくなってしまった、といった問題が出てくるかもしれません。

そこで政府は考えたわけです。
『介護離職ゼロ』を目指そう。介護を理由に仕事を辞める人が、ゼロになるようにしよう」と。そうすれば、企業側は有能な人材を手放さなくても済む。労働者側は仕事を辞める必要がなくなるので、再就職に困ることもなくなる。そのためには、介護職員を増やさなければならないが、失業者の雇用の受け皿にもなるので、ちょうどいいかもしれない……とこういうわけです。

「介護離職ゼロ」という発想自体への違和感

介護離職ゼロを目指す……。
多くの人たちが、これに対する意見をしています。「介護職員の人手不足はどう解消するんだ!」「介護職員の待遇改善が先だ!」「足りないのは介護施設ではなく、介護職員だ!」といった意見です。どの意見も至極まともだと思います。けれども私は、そういったまともな意見が思い浮かぶよりも先に、「介護離職ゼロ」という発想自体に、強烈な違和感を覚えてしまうのです。

介護離職ゼロ、という考え方の大まかな流れは、次のとおりです。
「仕事と介護の両立は難しい!」→「仕事を辞めて介護に専念してしまったら、生活費が維持できなくなり、再就職もできなくなる!」→「だから『介護離職ゼロ』を目指しましょう!」……。あまりにも、発想が単純すぎやしないでしょうか?

仕事と介護の両立が難しいのであれば、仕事を辞めて介護に専念できる社会を作る方向で、考えてもいいはずです。再就職ができなくなるというのであれば、再就職が容易な社会を作る方向で、考えてもいいはずです。「仕事を続けてお金を稼いで、そのお金で介護サービスを買って、身内の面倒を見てもらう」という考え方が、当たり前になってしまうことには、抵抗があります。なんとなく「学校の先生に、子どもの教育を任せきりにしている親御さん」のことを思い出します。

大切な家族と一緒に過ごせる時間なんて、ごくわずかです。よほど仲の悪い家族でもない限り、一緒に過ごせる時間を、大切にした方がいいと思います。後悔しないためにも、自分の身内の介護はできるだけ自分でできるような、そんな社会を目指すべきです。「家族とのつながりを断ち切ってでも働きましょう」という発想……。「働いて稼いだお金で、介護サービスを買えば済みますよ」という発想……。私には理解できません。もちろん、介護する側が身体を壊してしまうような、無理はすべきではありません。要介護レベルが高いのであれば、介護職員の手を借りるべきですし、施設のお世話になるべきです。

私たちは、「介護離職をしないで済む社会」ではなく、「仕事を辞めて、介護に専念することができる社会」を目指すべきではないでしょうか?

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