優秀な人材とは、能力が高く、自分よりも能力が低い人のことである
優秀な人材とは、能力が高く、しかし自分よりも能力が低い人のことです
「優秀な人材が欲しい」
「優秀な人材に入社してもらいたい」
人手不足に悩む企業は、そんなふうに思っています。
それでは、彼らが言うところの「優秀な人材」とは、一体どのような人材のことなのでしょうか? どうやら「能力が高く、しかし自分たちよりも能力が低い人」のことを言っているようです。
彼らは、自分たちよりも能力が高い人材を採用して、会社の利益をガツンと上げて、一人ひとりへの分配を増やしたい、などとは考えていません。彼らは、自分たちよりも能力の低い人材を採用して、会社の利益をそこそこ上げて、一人ひとりへの分配もそこそこでいいので、定年退職まで自分たちの立場を守ることができればいい、と考えているのです。
サッカーで例えると、こんな感じです
そこそこ強いサッカーチームがあります。守りには定評があるのですが、攻めが足りないために伸び悩み、なかなか一流チームの仲間入りが果たせないでいます。
そこに、フォワードが得意な選手が入団してきました。あとはいかに、この新人フォワードを起用するかです。しかし、この新人フォワードは、チームの力にさせてもらえません。先輩選手は、新人フォワードにこう言います。
「お前には、フォワードの技術や能力があるかもしれないが、とにかく3年間は『球拾い』から始めてくれ!『球拾い』は雑用なんかではなく、先輩選手のプレーを勉強するためのものなんだ! うちのチームは、昔からそういう決まりになっているんだ!」
結局、新人フォワードは3年も待てずに、このチームを去っていくことになるのです。
あるいは、新人フォワードは3年間我慢して、球拾いを続けたとします。しかし、彼にはもう、以前のようなサッカーに対する情熱は残っていません。かつてのような、キレのあるプレーは、見る影もありません。そこに、新時代のフォワードが入団してきました。3年間、球拾いを続けた先輩フォワードは、新米フォワードにこう言うのです。
「とにかく3年間は『球拾い』から始めてくれ! 昔からそういう決まりになっているんだ! 俺だってそうしてきた。だからお前もそうするんだ!」
このチームが、一流チームの仲間入りを果たすときは、永遠に来ないのです。
先輩選手には先輩選手の「強み」があり、後輩選手には後輩選手の「強み」があります。お互いの力を合わせて、より強いチームを作ればいいのです。先輩選手が「後輩選手に即レギュラーになられてしまっては、自分の立場がない!」と思ってしまうことは仕方がありません。けれども、その悔しさは、後輩選手を陥れることに向けるのではなく、自分のプレーに磨きをかけることに向けてほしいものです。
「企業の寿命は30年」という説にも関係しているかもしれません
「企業の寿命は25年から30年」と言われています。
「時代の変化に合わせて、会社も変化していかなければならないのに、その努力を怠った」「経営者の後継者が育たなかった」といった理由が、よく挙げられます。おそらくは、その通りなのでしょう。
しかし、もっと身近なところにも原因があるのではないでしょうか? 多くの人たちが「能力が高く、しかし自分よりも能力が低い人材」を求めているのです。これでは会社は、年を越すごとに、少しずつ確実に、悪くなっていくしかありません。良くてせいぜい現状維持ですが、現状維持さえも難しいというのが本当のところです。ましてや、会社が成長するなどといったことは、絶対にありえないのです。
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